猫、Siege、F3

メンタルとRainbow Six SiegeのPro Leagueについて好き勝手に考察する。ついった@Fuji3_R6

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シージ大会感想#3 Six Major Raleigh 2019 感想

 

 

 

はじめに

 

今回の大会の個人的なキーワードをいくつか並べよう。

 

「全盛期の勢いを取り戻したかに見えた王者G2、敗北」

「進化を続ける帝国サイボーグ部隊、Empire

「CLチーム兼Best4、SecretとforZe、その理由」

「”死のグループ”トップとなりながらも敗北。SSGの躍進と大敗」

アイデンティティを破壊されたVGIA」

「実は真の”死のグループ”だった?日本最強CAG、圧倒される」

 

 

その他にもEG、FaZe、Fnatic、DZ、野良連合、TSM、NIPについて触れるつもりだ。

そのような感じで、先日行われたSix Major Raleigh 2019についての感想を書いていく。

 

以前書いた「闘争」「競争」「技術」「影響」の話が相変わらず出てくるので、後でも先でも良いので読んで頂けたら幸いだ。

 

 

fuji3-r6.hatenablog.com

 

元々の記事

note.mu

 

 

 

 

チーム名後ろは話題にしているトピック。

 

 

 

 

 

 

 

 

大会感想本文

 

 

 

【 VGIA 】 最上位の「闘争型」チームに不足しているもの、VGIAの根幹を支える要素


アイデンティティを破壊されたVGIA」


トーナメントディレクター、そして解説でもおなじみのOkayamaさんが推していることでも有名な(?)VGIA. 数々のオフライン大会に出場してオフライン不慣れを克服し、EGやNIPも倒してPlayoffsに進んだ。

UUNOがいた頃、VGIAがLSEだった頃、私は比較的に熱狂的LSEファンだったと言って良いだろう。しかし、最近はそうではない。

それは別にオフライン慣れの面で負け続けているからとか、UUNOがKoreyに変わったからとか、そういった理由では無い。(相変わらず戦い方などは好きではあるのだが。特に攻撃。)


では、その理由は何なのか。


それはSSG、forZeに対する大敗の原因が、まさにその理由に直結している。

 


VGIAのforZeの負け方というのは、撃ち合いで勝てずにヤケクソじみたハードピーク*1に陥って負けた。そんな印象がある。

では、なぜ”ヤケクソピーク”に頼らざるを得なかったのか。それはSSGへの敗北とも共通する原因、「戦術的なメタの曖昧さ」にある気がしている。

VGIAは「闘争型」のチームとしては非常に優秀だ。「闘争型」としては世界最強と言っても過剰表現ではないのだろう。相手に影響を与えることも得意だし、相手の穴や隙を見つけ出して素早く突く動きも素晴らしい。


しかし、戦術的なメタという部分ではしっかりとした土台を作れていない気がしている。それは攻撃/防衛問わずだ。

 


固まって動いているSSGにはなかなか隙が無かったのではないか。

相手の動きに合わせてチームの動きを変えるVGIAだが、そうして対応に迷っているうちにSSGのセットプレイや遊撃殲滅チームプレイが実行され、一人ずつ削られていった。


「影響」でなく「技術」の部分で戦われ、あっけなく負けてしまった。(チーム相性と言えばそれまでだが…)

そして彼らの闘争力、影響力を支えているのは”撃ち合い”。EUでもトップクラスの撃ち合いの強さがあるし、積極的に撃ち合っているので経験豊富であるのは確かだ。


だが、forZeは軽くそこを越えてしまった。Raskの読みにくい奇襲的な動きや不利を前に出て対処するスタイルも大きかっただろう。

 


普通のチームなら撃ち合いで勝てない部分が多くなってきたら、チームとしての「競争的要素」、つまり戦術や「技術」の面で戦おうとするだろう。しかし、それはVGIAには無かった。


自分たちの「闘争」スタイルの根幹を支える”撃ち合い”が崩され、それで頼るべき「競争」、「技術」、戦術を持ち得なかった。ゆえにヤケクソピークに陥ったのではないか。

 


崩壊寸前のアイデンティティ”撃ち合い強さ”に縋らざるを得なかったのだ。そしてそれは成功しなかった。チームとしての動きもバラバラであった。

 

実際はそこまで撃ち合いで負けてはいなかった気がするが、追い詰められたVGIAが行う前めのアクションは、思慮無き、思考停止寸前のものとなってしまっていた。

冷静になってチームでアクションを起こせれば、また違った結果になったかもしれない。

 


”撃ち合い”が「競争」も「闘争」も支えるあまりにも大きな柱、チームの根幹になっている為に、”撃ち合い”が上手くいかないと全てが崩れてしまう。(彼らのスタイルが発揮しにくい国境というMAPも関係していたのだろうが。)



最近のVGIAを応援しきれない部分、「強いし個性的だが世界の頂点には立てないのではないか」と感じてしまう部分はそれらの2点だ。


「競争力」の低さ、つまり戦術的なメタの曖昧さ。

そして撃ち合いが根幹を成しているがゆえに、それが打ち崩された際に対応ができないこと。

 


ずっとオフライン問題が囁かれてきたチームだが、今振り返るとメタの未熟さも勝てない理由に関わり続けていた気がする。


自分たちのスタイルが明確で、さらに強力である為にぶつかってしまう問題なのかもしれない。(こういった問題は、似たようなチームであるRECにも起こってしまっている印象だ。)

チームを支える一本柱が崩れた際にどうするか。その対応を見つけ出さない限り、VGIAは”上位に居るが勝ちきれないチーム”のままかもしれない。

 

 

 

 

 

 

【 CAG 】 日本競技シーン、メンタル負け対策


「実は真の”死のグループ”だった?日本最強CAG、圧倒される」

全盛期の勢いを取り戻したG2、最終的にBest4まで上り詰めたSecret、そのSecretから1MAP取って、互角に渡り合ったRogue.

実のところ、グループBは隠された真の”死のグループ”だったのかもしれない。
CAGは対策され、それに抗うことができずに圧倒されてしまった。仕方の無かったことなのかもしれない。

 


しかし、私のTwitterにはこんなコメントも来た。
「実際、対策よりもCAG自体に問題があったのではないか。(意訳)」

 


個人的に思うこととしては、両方が正しいのだと思う。対策の面もあったし、CAG側に問題があって本来のパフォーマンスを発揮できなかった面もあるだろう。

”問題が出続けた”のは対策が厳重であった為、というのが個人的な意見だ。

 



これに関しては思うことは2つ

  • CAGに対策を構築出来なかった日本競技シーン全体の問題
  • メンタル負けほどもったいないことはない。普段の練習と世界大会

 


Twitterでも発言したが、CAGの敗北に対して日本競技シーンに関わる人が感じるべきは「ショック」なのではないかと思っている。


日本全体を圧倒して誰も対策を構築しきれないままであった存在が、世界で簡単に叩きのめされた事実。その事実に私はひたすらにショックであった。(そのショックはその後の諸々にも…)

なぜ自分たちがそういった対策を作れなかったのか、それを考えることが必要なのだろうと思う。

CAGの圧倒的敗北は、彼ら自身の責任だけではない。日本競技シーンの全体、日本のシージ環境全体にも原因はあるだろう。それは私自身も例外ではない。

 



さて、次はメンタルの話だ。当たり前だがメンタル負けするのはもったいない。


メンタルで負けると、そもそも自分達の戦術やスタイルが世界で通用するか分からないままになる。

次はメンタル負けしない所から話が始まり、戦術修正などの必要性が判明するのが遅れていく。全力を出して通じるかが分からないのに、全力を出せればそれが分かったかもしれないのに、そこまで到達できてない。



理想論であるのは分かっているが、非常にもったいないことだ。

その間に月日は流れていく。シーズンは進み、世界で勝っていく為の問題点抽出が遅れていく。


理想論であるのは分かっているが、各チームはメンタル面にどれだけの努力をしているのだろうか?


体を動かす行為などによってメンタルの改善を図ることができないEスポーツでは、脳の基礎スペック、メンタルの基礎スペックが重要になるだろう。
そこを底上げする”何か”が行われているのだろうか?(見ている限り、海外チームも全く例外では無いが。)

 


普段の練習はどうだろうか。世界で戦う際と普段の練習の際、同じ態度、雰囲気で行えるだろうか。

練習で行っていることは本番で出ると同時に、練習で行っていないことは本番ではできない。ひどく当たり前の話だろう。

軽い雰囲気で試合に臨むことに苦言を出す人もいる。スポーツマンシップなどを持ち出して非難する人もいる。
個人的にははそういったモラル的な側面はどうでもいい。

 

ただし、「その雰囲気を世界でも発揮できるなら。その雰囲気で世界で勝っていけるなら。」という注釈はつく。
世界の場に出て、突然に雰囲気が変わって例えばシリアスになっても、普段やってないことならコミュニケーションエラーは当然出る。



正直、CAGの普段の練習の様子なども分からないのでなんとも言えない…というか彼ら個人に向けた話では無いのだが。
軽かろうが、おちゃらけてようがなんでも良い。しかし、”それを本番で発揮できないのなら止めた方が良いのでは?”という感想も抱く。

 


「普段からそれでは疲れてしまう。ストレスが溜まってしまう。」そう言うなら好きにしたらいい。ぜひ勝って私を黙らせてくれ。期待している。

(そもそも現場経験が無いのに偉そうに言うなという話かもしれない。もっともな話だ。)

 

 

 

 

 

 

 

【 Secret 】 CL落ちチームが躍進した理由、見習うべき”リスクの背負い方”


「CLチーム兼Best4、SecretとforZe、その理由(Secret編)」


今までのSecretはとかく防衛が弱点。「LeonGidsの遊撃がなんとかしないと負ける」が言い過ぎでもないのが悲しい感じであった。


しかも、頼りのLeonGidsは単独遊撃なのでストレスが大きく、対処もされやすいという弱みまで存在していた。攻撃で優位を取り切れないと負けが見えてくるイメージすらあった。

 


しかし、FonkersやFerralの加入によって前に戦っていける、遊撃で勝負していける人員が増え、防衛の戦い方に幅が増えた。

それは大きな変化だったのだろう。弱みの防衛を”刺さる対策”を実行できる武器に変えることができた。


まだまだ荒削りというか、個人技への依存も大きい気がするが(Empireへの敗北はまさに個人技負けというか、個人技でなんとかできる状況に持って行けなかったというか…)、その変化はSecretの躍進を支えた。

Rogue戦でもSSG戦でも防衛で優位を取れている。

個人的にはFAVみたいに状況に応じたチーム勝負”も”して欲しいところだが。どうなるだろうか。

 

 

 

防衛について話してきたが、Secretの一番の特徴と言えば攻撃だろう。

 

相手の薄いところや隙を突く意識、その”薄いところ”を作る意識、時間等のリソースに対する割り切り、リスクを積極的に背負える意思。

今のSecretの攻めは一言で言うなら「殲滅重視」になるのだろうが、その攻撃はひどく独特だ。

 


特にリスクやリソース、長期的な試合運びといった観点で行動の理由を考えると、非常に面白い。そして唸らされる。私はいつも大興奮だ。*2

ラッシュの使い方などは「半ば失敗する前提」で「後に与えられる影響を考えて」行われているように感じている。

ラッシュという武器を示すだけではなく、実際に通せることもあるという事実は、後に尾を引く揺さぶりとしては非常に効果的だ。それは失敗しても同じである。



例えばCAG vs G2、CAGがラッシュを巧みに通せたならば、G2はあのように時間を稼ぐだけ稼いで容易く引いていく形を多用できなかっただろう。どうしても後背が気になったはずだ。

 


遺伝子的にネガティブな人が多い日本人は、リスクを背負うことや失敗が苦手だ。

もしくはリスクの背負い方や失敗の仕方が”一様”になってしまっているかもしれない。(正直、日本人に限ったことでもないが。)


日本のチームには是非ともSecretのリスクの取り方を参考にして欲しいと思っている。必ずしも真似をする必要は無い。だが、行動や選択の理由を考えるだけでも参考にはなるだろう。

 

 

 


G2とSecret、類似と差


G2とSecretは似たチームであると思っている。

もちろん細かい所では大きく異なっているし、その違いは細かくないという人もいるだろう。

 

しかし、根本の意識、考え方というものが似通っている気がするのだ。

いわゆる相手に対してひどく的確な分析を行って、妥当かつ刺さる対策を用意してくることなどだ。
そういった対策がぶっ刺さると、相手の良さが一切発揮されないまま、試合全てをコントロールして勝利する。そんな試合展開が両チームともに見られることがある。



では、この2チームに何が違うかと言えば、試合の中での対応力や柔軟性なのだろう。G2はSecretよりその点で勝っている。


G2は用意してきた戦術が上手くいかなかった時など、ラウンド間に戦術の”型”ごと一変させられる印象もある。事前準備でなく対応力にも優れるという訳だ。(決勝後半では若干かげっていたが。)

 


対してSecret、事前準備は同じように優れているものの、試合の中の変化という意味では劣る気がしている。つまり、準備にこだわり過ぎる節があるのだ。

 


対応が一切無いなんてことは全く無い(むしろ攻撃側での対応は非常に優れていると言っても良い)、のが説明を難しくしているのだが…G2は事前に準備してきた型/スタイルを変えられるが、Secretはほとんど変えられないと言うと伝わるだろうか。

 

 

 

他にもG2が勝っている点としては、防衛における細かいチームプレイや集団での戦い方というのもあるだろう。Secretの方が明らかに個人プレイは多い。

 

Secretは個人単位のリスク背負い、G2は複数人またはチーム全体でのリスク背負い。そんなイメージがある。

その差はわずかに見えて、細かなアプローチの成功率や“不利を取らせない”という点でG2が上回っている。

 

Secretはリスクを負う意識が素晴らしいが、「リスクを背負うことに遠慮が無さ過ぎる」と言えるのかもしれない。リスクヘッジの意識が薄いとも言える。


それは個人リテイクの多用に表れている。彼らのスタイルは読めなさにも繋がっているだろう。

しかし成功しなかったときの損失は大きく、個人ごとの負担も大きく、そしてリカバリーも効きにくい。

 

先述したメンバー加入によって、遊撃やリテイクの負担を複数人で受け持てるようになってはいる。それはSecretにとって非常に大きいことであったのだろう。

最大4人で個人技依存の高い遊撃、そのストレスに立ち向かっていける。

 

 

しかし、G2はまず個人技ではなく、まず連携で次に個人技というイメージだ。
というより、連携ができなくなって初めて個人技に頼ると言った方が正しいだろう。


人数不利を背負ったG2の急激な動きの変化を実感している人は多いのではないか。

 

 
こういったことはSecretが悪いというよりはG2が凄いと言えるかもしれない。

しかしながら、その差はG2 vs Secret戦の結果に如実に出たのではないだろうか。


もちろんSecretの緊張、恐れのようなものもあっただろう。あそこでG2を苦戦させられていれば、決勝のG2は違うパフォーマンスを出せたのかもしれない。

決勝まで多く苦戦したEmpireと一切無かったG2、接戦になった際にその差が大きく出た可能性もあるのでは?と感じる。

 

 

そうは言いながらも、Secretは銀行などでチーム勝負が見られたので、今後はまた変わってくるかもしれない。


Secretに期待しよう。いや、期待も何も公式大会で見られるのは何ヶ月後だよという話だが…*3

 

 

 

 

 

 

 

【 SSG 】 息の合ったタイミング感、「競争」特化の宿命

 

「”死のグループ”トップとなりながらも敗北。SSGの躍進と大敗」

 

SSGは昔からタイミング合わせなどが優れたチームであったが、今大会の息の合ったチームプレイの”息の合い具合”には驚かされた。

射線の担当/分担なども優れていて、VGIAやEGですら抗えないレベルまで到達できているのは素晴らしい。


作戦として特別なことや独特なことをしている訳ではないが、チーム連携や基礎力で”死のグループ”を容易に突破した。

 

しかし、Secretに対しては圧倒的な敗北を味わった。なぜか?

 

答えはずいぶん前から出ている気がしているが、NAの多くのチームは気づいてないようだ。
自分たちの型がはっきりしているが故に、それに対策を施された際にどうしようもなくなってしまう。

対応のために型をガラッと変えることができずに、「今のベストを尽くそう」みたいな選択しか取れなくなってしまう。

 

 

SSGの連携は巧みなので、殲滅狙いの多いSecret攻撃に対してSSG防衛は比較的に相性が良かった。

しかし、Secret防衛が選んだ戦術/対策というのは、SSG攻撃に相性が良いなどというレベルでは無かった。「ぶっ刺さった。刺さりに刺さりまくった。」そんな表現が的確だと考えてしまう程だ。

 

Secretは「セットプレイに持ち込ませない。チーム連携に持ち込ませない。もしくはその前に人数や時間を削る。」そういった意思が明確に感じられた。


SSGはそれに真正面から付き合って人数を、時間を、リソースを消費。セットプレイが十全に行えない状態にされていた。

完全にSecretの想定通りに動いた形だったろう。

 


もしかしたら、Secretのリスクの背負い方がSSGに安心感を与えてしまったのかもしれない。
劣勢に陥っている中でもSecretのラッシュを防げたことなどは、SSGに「勝てないことは無い。自分達はこのままでも行けるんだ。」という感情を生み出してしまったのかもしれない。


Secretの項目でも触れたが、Secretはラッシュなどリスクの高い選択を「失敗してもしょうがないが、やる意義はある。」という考え方で選択している節がある。
もともとリスクの高い選択なのだ。失敗する可能性は十分にある。SSGはそこを拾えただけとも言える。


しかし、そのラウンド勝利はSSGに安堵と自信を与えてしまったのかもしれない。(そこまでSecretが狙ってやっていたのだとしたら、恐ろしいことだが…流石に無いだろうか?)

その安心感はSSGから”変化の必要性”の実感を、変化を求める気持ちを奪い、そして圧倒的な試合支配の差に繋がっていった。そういった発想も面白いだろう。

 


と同時に、「影響」を重視するスタイルが世界的に流行ってきているが故に、SSGのような基本がしっかりしているチームが上位に食い込んできている。

それだけ見るとSSGの全てが悪いということでは無いだろう。


「影響/闘争」を重視するチームは強いのだが、基本的なメタが下手なままのチームも多い。

窮地や土壇場で勝敗を決するのは、結局のところメタなどのひどく基本的な部分だったりする。「技術/競争」だったりする。

 

そう考えるとなんだか不思議な状況だ。結局のところ「競争」と「闘争」のどちらが強いのだろう。

 


しかし思うに、つまりは「競争」特化も「闘争」特化も最終的には勝ちきれない。そういうことではないだろうか。


「技術」、「影響」、どちらも平均以上でないと王者には至れない。そういった時代になってきているのだ。

「競争力」と「闘争力」の両方があって初めて、最上位に上り詰めることができる。

 

 

改めて言うと「何を当たり前のことを」という感じもする。

「メタなどの基本的な技術を身につけてなくてはいけない。」かつ「相手に合わせて対応、変化できなければならない。」ということである。


だが、”どれくらい意識して普段の活動ができているか”となると、なかなか馬鹿にできない話となってくる気もしている。

 

 


そういう意味では本大会のEmpireの優勝。それは実に理にかなった結果であるのかもしれない。Empireは圧倒的な「競争型」チームであったが、本大会では「闘争」(にも見える)戦いというのを見せていた。

 

随一の「競争力」を持つチームが「闘争」を身につけ始めたのだ。(自分でも確信には至ってないが。)
その恐ろしさについてはEmpireの項目で触れよう。

 

 

 

 

 

 

 

Empire 】 優勝を支えた変化、帝国に起こりえるはずのなかった成長

 

「進化を続ける帝国サイボーグ部隊、Empire

宿敵G2を打ち倒して真の世界王者に至ったEmpire.
彼らの優勝には何よりも恐ろしい事実が隠されている。

Empireの変化/成長”だ。

「チームが変化するのは、成長するのは当たり前だろう。」という意見は当然のことだが、彼らが今回見せた変化はEmpireというチームにとっては“あまりにも劇的な変化”だった。

 

Empire以外がその成長を遂げたとしても、そう驚くことではない。だが、Empireに起こるとしたら驚異的な事態になる。そういった変化だ。

 

 

 

その変化はS10前半戦の頃からぼんやりと見えていたのかもしれない。

S10前半の彼らは正攻法のPlantではなく、ラウンド途中に行われるラッシュ的な殲滅アプローチなど見せていた。
もちろんグループステージやPlayoffsでもその片鱗は見えていた。

 

しかし、その変化が如実にあらわになったのは決勝G2戦。
恐ろしいことに、決勝に至るまで彼らの成長は”隠されていた”可能性がある。

 

 


今までのEmpireの特徴について改めて触れよう。

 

順序良く正攻法に手順を踏んでいって、強靱なロックによりPlantアプローチに持ち込む。Empireの攻めといえばそういった印象だろう。
まずロックが強靱すぎてPlant阻害は困難だし、Plantが失敗しても細かいチーム連携と撃ち合いの強さでラウンドを奪い取ってしまう。

 

ではPlantを確実に行わせないようにと前線を引き上げて戦うチームも多い。
しかし、Empireはそういった相手の「Empireの強みを潰すための戦い」を返り討ちにして潰すことも得意なのだ。

 

そして、相手の試みが成功して少人数戦になったとしても、先述した細かいチーム連携と撃ち合いでなんとかなってしまう。Empireの真に恐ろしいところの一つだ。

 


つまり、Empireは史上最強の「技術特化型」チームなのだ。


Empireのスタイルは正攻法にも関わらず、強力過ぎるがゆえに全ての「影響」を粉砕できる。

相手からの「影響」を全て退け、自分達の型、自分たちの土台を押しつけ続けることができる。

 

 

 

しかしながら、G2戦で見せた姿は「技術特化型」では無かった。

 

特に国境では顕著であるように感じた。

武器庫攻めしていてPlantに入るようなタイミングで突然の資料殲滅の動き、セキュリティなど完全に確保できていない状態でのPlant強行、海岸線での遊撃を放置したチーム殲滅の動き…今までの「遊撃排除など丁寧に手順を踏んでいって、ロックを整えてPlant」そういったEmpireのイメージとは異なった戦術が多く見えていた。

 


それはつまりどういう意味か?

 

Empireが「闘争」を身につけた可能性があるのだ。

「技術特化」で世界の頂点を取れるようなチームが「闘争」を獲得したかもしれないのだ。

 

 

もちろん、「闘争」ではなく、単純にEmpireが新しい型を身につけた、戦術が広がっただけという可能性もある。

「相手に影響を与える為に自分たちの型を一変させた」訳ではない可能性も十分ある。単なるG2対策の一環だった可能性もある。


Empireが「闘争」を習得したという確信は、正直言って無い。情報がまだ少なすぎるのだ。

それでもEmpireが「闘争」を得たかもしれないという推測は、恐ろしい状況として脳内に居座る。

 

 

 

「競争型」「闘争型」、どちらかに寄っている状態でもう片方を獲得しようとすると、チームのバランスが崩壊して一気に弱くなってしまうこともある。(もしかしたらEGやFnaticがそうなのかもしれないという話は後ほど。)


しかし、EmpireはあっけなくG2にすら勝ってしまった。全盛期の姿を取り戻したかに見えたG2を、正式な”前世界王者”にしてしまった。

 


仮にEmpireが、世界最強の「技術型」が「闘争」を身につけたとしたら、いったい誰が彼らを止めるのだろう?


去年のMajor Parisの頃、G2が世界を圧倒し続けて生じた「このチームどうするんだ感」
事態は去年より深刻なのかもしれない。そういった考えが頭によぎるのを止められない。

 

 


シージは「影響/闘争」の枠組みだから「闘争型」チームが結局は最強なのではないか?というのが個人的な主張だ。
その点では今までのEmpireは私の観点では隙があった。弱みがあった。


だが、今は違う”かもしれない”。成長を遂げた”かもしれない”

 

 

我々は忘れていたのだ。


Empireは成長半ばで世界の頂点に君臨したということを。
Empireは”まだ若いチームである”ということを…

 

恐ろしいことに帝国サイボーグ部隊は成長中なのだ。世界王者は成長途中なのだ。

 


この推測が正しいか、正しかったとして本当に良い方向に働き続けるのか、それは今後のプロシーンにおいて明らかになっていくだろう。

 

シージ競技シーンは何時代に突入するのだろう。Empire一強時代?EmpireとforZeのロシア覇権時代?EmpireとG2の2トップ時代?

皆さんは今後の展望をどう考えるだろうか。

 

 

 


Empireの変化とShepparDのMVP

 

Empireの攻撃については触れたが、防衛には触れていなかった。


Siege.GGのShepparDに対するインタビューでも本人が言っていたが、「撃ち合いにしり込みせずにリテイクも激しく仕掛けていく」ことがEmpireの作戦だったようだ。

 

防衛に関しては「闘争」なのか微妙なところかもしれない。

 

しかし、そのアグレッシブさはJoyStiCK一人が遊撃に出る形から乖離して、チーム全体での前めな防衛として成立していた。

その防衛は相手の意表を突くことにも成功していただろうし、単純に戦術の幅を広げて弱点を補うことにもなった。Empireの優勝を支えた要因の一つだろう。

 


MVPを取ったShepparDは状況の変化に合わせて現地からリテイク、遊撃補助に出るような印象だった。今までの現地籠りというスタイルからは離れた動きだ。
今まではkarzhekaやdanが担っていた役割に、ShepparDも加わるようになったということだろうか。

 

人数不利を背負った際に籠って戦うのではなく積極的に前に出て勝負する形は、多くのクラッチを導いてもいた。

 

防衛スタイルの変更、ShepparDの役割変更はMVP獲得を助けたのだろう。(ロックに真正面から勝負していたG2の防衛スタイルも関係したと考えているが。)

 

 

 

 

 

 

 

【 G2 】 最終的なメンタル負け、G2と”恐れ”の関係性



「全盛期の勢いを取り戻したかに見えた王者G2、敗北」

 

本大会のG2は、去年のMajorで覇権を握っていた頃と同じようなチームプレイが復活してきていて、

 

「なんだなんだ。やはり戦術隠しをしていたのか?」

 

と思ってしまうような”全盛期っぷり”であった。(TSM、Empire以外のチームはメチャクチャビビっていたので、その辺りも関係しているかもしれないが。)



相手に合わせた対策をチーム連携で成立させてくる感じ、相手のアプローチに複数人で対処する形、大事なエントリーや勝負を複数人で距離感巧みに詰めていく姿、高い柔軟性などを含めて最強時代の特徴を取り戻していた。

 

 

しかし、Empire戦の後半2マップではチーム連携が悪化し、タイミングのずれや柔軟性の低下が発生。王者は帝国の前に陥落した。

あのG2でも、この短期間では極限の状況で発揮できるほど詰め切れてなかったということか。

 

 

決勝に至るまでメンタル的に優位を保ち続けていたG2が、最終的にメンタル負けするのはなんだか不思議な気持ちもする。

それだけEmpire(とその変化)が強かったのだろう。(Secretの項目で書いたが、決勝まで苦戦が無かったことが悪い方向に転がった可能性もあるかもしれない。)


かつての強さを一定以上取り戻したと言えるG2だが、相変わらずBO1では苦戦するかもしれない。よって、確実に日本で見れるかどうかは分からない。


その可否は今度のDreamHackで明らかになるのかもしれない。

 

 


しかし、本大会で強く感じたのはG2に相対するチームの「恐れ」という部分だろう。

これに関してしょうがないところが少しはあるのかもしれない。

 

なぜならG2は“読みにくい”からである。


相手に的確な対策を施してくるG2だが、その対策を行うために相手によって戦術や戦い方をガラッと変える。それがG2だと言えるだろう。

完全に一変しているという訳でも無いだろうが、対戦するチームは「何をしてくるか分からない」感じを少なからず味わっているはずだ。

 

 

人間は恐れるものとは何か。

人間は理解できないもの、分からないものを恐れる傾向がある。
例えば幽霊。幽霊とは合理的に理解できない、分からないから怖いのだ。

 

 

ホラー映画で「幽霊の正体が実は昔の友人の〇〇だった。」などと判明した瞬間に怖くなくなったり、白けたりした経験があるのではないだろうか。

 

G2は事前の情報、分析だけでは“理解しきれない”。それは恐れを導くのかもしれない。

そして、ラウンド中の変化、柔軟性にも優れている。さらに“分からない”は加速していく。

 

 

G2は戦術的幽霊なのかもしれない。

恐れはG2の強さを支えているのかもしれない。恐怖対策が必要なのかもしれない。Empireのような強靭なメンタルを作る必要があるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

【 forZe 】 撃ち合いが「競争」と「闘争」に与える影響、シージのFPS的成長


「CLチーム兼Best4、SecretとforZe、その理由(forZe編)」


撃ち合いはFPSにおける最強の「技術」であると同時に、FPSにおいて相手に最も「影響」を与えられる最強の武器でもあるのだろう。

 


真の王者になったEmpire、そしてforZeの躍進、特にVGIAへの圧勝からそう感じた。

もちろんこの両チームは撃ち合いだけで勝ってきた訳ではない。それでも、撃ち合いの面は馬鹿にできないだろう。


VGIAの項目でも触れたが、forZeの撃ち合い強さはVGIAのアイデンティティを崩壊させる程であった。

DZ戦では仕込みドローンで完全に位置バレしていて、決め撃ちも入ったのに何故か勝つシーンなどもあり、Empireに負けず劣らずの“意味不明さ”を醸し出している。

 


同時にガジェットの使い方などにも光るものがあり、ヴァルカメによって積極的な撃ち合いやリテイクを成立させたり、ニトロ突き上げ重視のスタイルなども見せている。

 

VGIAがRaskイエーガーを潰しに来ていることを理解したら、チームのリソースを大量に投入して真正面から立ち向かうなど、対応力を発揮することもあった。

引きロックで逃げを封じられたら、あえて前に出ることで相手の想定を覆す場面もあった。(普通は耐えて少しでも時間を稼ぐ選択をする。)

 

 


しかし結局は、一部の無茶な立ち回りを可能にする撃ち合いの強さ、そこがやはり重要だ。


forZeはまだ見えているものが少ないのもあって、撃ち合いの話に落ち着いてしまう。

そんな状態でありながらも、Majorベスト4まで来ることができたという事実。

 


その事実が冒頭の発想を再び思い起こさせる。

撃ち合いはFPSにおいて「技術」と「影響」の最強の武器という話に帰着するのだ。

 


シージも結局はFPSゲームという土台から逃れることはできないのだろう。

言うまでもなく当たり前の話なのだろうが、改めて感じさせる結果であった。


これまでのシージはそういったFPS的要素はそこまででもなかった。そう考えると”FPSゲームとしては”環境が発達した"のだろう。


このまま”シージ的要素が潰されない限り”は、この発達を歓迎している。

 

 

forZeは、まだまだ荒削りなところがあるが故にそういった行動ができたのか、それとも本来の特質なのか、まだ見えてはいない。


だが、今後が楽しみなチームであるのは間違いないだろう。

Empireとの2トップ体制になってシージはロシアに支配されるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

【 DZ 】 「競争力」の高さに振り回された可能性?


メタ的な強さと奇策寄りの奇襲の両面を併せ持つDZ。
正攻法で打ち勝ちつつも、変化球的に正攻法からずれた戦術を行って、さらに優位を広げる動きも見せていた。

 


しかし、forZe戦では撃ち合い強さを恐れたのだろうか。

遊撃排除や真正面からの勝負は控えめで、マップを狭く取るようなスタイルに見えた。それはforZeの自由な動き、リテイクしやすさに繋がってしまったか?



FaZe戦で頻繁に起こったのは、自分達の焚いたスモークを逆利用される場面。


スモークによって勝負タイミングを悟られ、逆ラッシュを仕掛けられていた。

特にFaZeは真正面から突っ切る動きが多く、さらにその勝負をチームで行えていた。


そのアプローチはDZの想定を何度も越えていたように見えた。

 


Plantアプローチが始まっても側面を警戒できていたFaZeが優れていたのもあるが、DZの正攻法、メタ、「競争的要素」の高さが仇になっていた可能性もあるかもしれない。


DZは正攻法に優れるために、ロックや1の動きの位置取り、タイミング、やりたいことが分かりやすかったのかもしれない。



FaZeはDZの動きをしっかりと予測、想定できているように見えた。

そして先述した通り、反対にDZは動きを読めていなかった。

 


今のDZは正攻法と変化球を上手く組み合わせて使えるが、それは「正攻法がある程度通用したら」という条件がついてしまうのかもしれない。


変化球を積極的に使わなければならない状況に弱いのかもしれない。

「闘争」を使いこなせていないのかもしれない。

 


そしてそれは、NAの環境で鍛えるのは難しいだろう。

 


しかし、NAにおいて比較的「闘争型」チームでありながらも上位にいるDZには、まだまだ可能性がある。


今後の活躍に期待したい。

 

 

 

 

 

 

 

【 野良連合 】 伸びしろ構築の段階?、彼らの目指すチームプレイとは


S10前半戦でも見えた戦術的なアプローチか見られることもある野良連合。

「今後はチームプレイを目指す。」とのことだったが、彼らの志向するチームプレイと私の考えるチームプレイは違うのだろう。


目指すものが違うのはもちろん全然構わない。しかし、彼らが目指した成果はまだまだ見えてきていない。

plant後のロックや位置取りの甘さ、ファミ通の記事でも紹介した継続する弱点。

 


苛烈な意見を言わせてもらえば、「チームプレイ」と称するには連携不足である。

そして「チームプレイ」という考え方で、nRの特質であった個人技の発揮が抑えられてしまっているイメージもある。

試行錯誤の片鱗は所々で見える。今は伸びしろを水面下で構築している段階なのかもしれない。



しかし個人的な視点では、好意的な展望が見えてきていない。*4

以前まで見られた急激なチーム再編成も抑えられ気味だ。


私の考えでは成功が見えないということは、仮にnRが世界で勝ち進めた時には新たな視点や発想を与えてくれるということでもある。

 


それを期待したい。

nRが昔以上の強さを取り戻す為にどのような変化を遂げるのか、それを楽しみにしている。


Wokkaさんを戻すべきという意見もあるのだろうが、「じゃあ誰を抜くのだ?」という問いが迷宮入りするくらいには良いメンバーが揃っているはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

【 TSM 】 荒削りだが可能性を感じるTSM、優れたチームの意思統一

 

NA PLでは出場メンバーが安定しておらず、結局強いのか弱いのかよく分からなかったTSMだが、本大会である程度掴めた気がする。

 

現段階では確実に強いとは言えないが、可能性のあるチームであるように感じている。なぜなら、チームの目的や戦いの場が統一されているからだ。

 

「どこで戦うべきか、どの段階で戦わなくてはならないか。」

 

その理解がしっかりしていて、チームで取り組めている。前線の共有が成されている。
それはEmpire戦、カフェ勝利にも繋がっただろう。

 

 

平面的な撃ち合いが得意なEmpireに対して、ラペリングの段階から積極的に勝負する防衛スタイル、窓からの飛び出しやショットガンによる窓へのPeekも含めた強気な戦い。

そういった戦い方はEmpireを苦戦させた。

 

カフェというマップに関してはEmpireが下手だったのもあるし、後の試合を見る限りだとそもそもEmpire対策だったのかも怪しい。


しかし、チームでの戦い所がまとまっていたのは事実だ。やりたいこと、その裏にある意識や理解が伝わってくるチームだと感じた。

 


同時に、欠点を多く挙げられるのも事実。


「場」は共有されていても「タイミング」はバラバラなことの方が多いし、エントリー近辺の戦いに頼りすぎている節もある。


その欠点はG2戦では如実に出ていた。

明らかに戦い方を読まれていたのに変化を加えられなかった(NAチーム全体の弱点だが。)

 


しかしながら、高い個人技とその奥底にある統一されたチーム意識。

そういった特徴は今後のTSMの飛躍を導くのではないかと思っている。

 

 

元DZ、Pojomanが入ったのが本当に大きかった。(しかもコーチとして入ったのに、選手としてもかなり活躍してる。)
再びのメンバー変更でどうなるのかは分からないが、良い具合にPojoが舵取りしてくれそうな雰囲気だ。

 

 

S10後半戦はどこまで上がってくるだろうか。それともやはりBO1の悪夢に悩まされるのか?

 

 

 

 

 

 

 

【 NIP 】 最強のリテイク集団、あと一歩を阻害するNIPの弱点


NIPは昔から防衛が特徴的だ。

前からリテイク!リテイク!といった感じのチームスタイルであった。


5人全員がクラッチプレイヤーと言っても過言ではない状態になったことで、全員がある意味で横並びになった。全員が遊撃をこなせるようになった。全員が前に戦えるようになった。

 


それはNIPの最近の飛躍を支えている気がする。
攻撃における連携の向上にもそういった実力の横並び感が関係している印象だ。



いくらローテーションロックを入れられても、一切へこたれずに移動し続け、リテイクし続ける。高いシージセンスと個人技がそのプレイを支えている。


それは情報ガジェットが無かろうと同じであり、その潔いスタイルには敬意すら抱く。

彼らのスタイルに魅了されている人も多いのかもしれない。

リスクも個人技依存も高いのでおすすめはしないが、実際に勝てているのだから防衛は問題ない。

 

 

問題はひたすらに攻撃だ。

 

 

ラッシュ力や撃ち合いの強さはあるものの、戦術的には劣る。

時間管理やロックなどのリスク管理も甘く、せっかく序盤に優位を作れてもひっくり返されることが多い。突き上げ警戒なども甘いか。

防衛と違って勝負がバラバラでは勝ちきれないのが攻撃だ。

 

エアジャブなどでCoverしようという意識、IQによって確実なリテイクを減らそうという意思は見えるが、それは十全に機能していない。

せっかく制圧した2階を最終局面で取り返されてしまう展開は非常に多い。

 

自分たちがリテイクを多用するのに、やられる側になったら対応しきれないのは残念な部分だ。



このもったいなさはVegas Minorの頃から変わっていない。

LATAM地域では鍛えにくい要素ではあるだろうが、惜しい。



逆に言うと、その弱点が解消された瞬間にとんでもないチームになる。
防衛に関しては既にEmpireやforZeと同じくらいの意味不明さを発揮しているので、あとは攻撃だけなのだ。

 

「競争/技術」「闘争/影響」どちらでも良いから向上させるだけで化ける。

今のNIPなら化けるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

【 FaZe 】 コミュニケーションの改善?、リスクに対するチームプレイ


リスクの背負い方、細かいチーム連携が改善された印象がある。
コミュニケーションが良くなったのだろうか。

 

特にリスクの面では、かなり合理的な選択が増えていて好印象だ。

リスクを負わなければならない状況で、思い切ってリスクを背負えている。

さらに、それがチームで行えているように感じている。

 

DZ戦における思い切った正面リテイクはかなり効果を発揮していた。

 

 

Empire戦、クラブハウスでの戦いも見事だった。

室外への飛び出しで真正面から撃ち合わずにカットする形や、JoyStiCKの1の動きに対してチームで立ち向かう動きなどだ。

 

特に地下青階段を進行してくるJoyStiCKを尋問したシーンは印象的だ。


JoyStiCKは単独で青階段を制圧できるのが強みであるが、単独である弱みは否定できない。FaZeはそこを突いたのだろう。

カベイラが青部屋に居たのは偶然では無いように感じる。

 

しかも、実際のラウンドではJoyStiCKは2カットしている。本領をしっかり発揮している。

そこに対して撃ち合っていく為には強いメンタルが必要だっただろう。

FaZeの精神力も評価したいところだ。

 

 

FaZeのクラブハウス勝利とSecretの海岸線勝利、Empireの得意マップに対する二つの勝利によって、サイボーグ部隊は倒せない相手ではないことを示せたのは大きい。

 

 

LATAMはNIP一強時代に突入するかと思いきや、分からなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

【 EG 】 変革の前段階の可能性?

 

「初めてのグループリーグ敗退、EG」

 

EGの試合で大きいのはVGIAへの敗北だ。もちろんSSG戦も大きくはあるのだが。

 

今回のEGに対してよく言われていたのは「メタで負けている」といった意見か?
防衛では突き上げと同時のPeekや人数有利を取ってからの堅実なクロスなど見せることもあったが、攻撃は全体的に通せないことが多かっただろうか。


EGにはS9 Finalで若干「闘争」に寄った印象を受けた。もしかしたらその変化がさらに進んだのかもしれない。

 

結果、「競争」と「闘争」のバランスが崩れてしまい、うまくパフォーマンスを発揮できなかったのかもしれない。(それにしても攻撃はだいぶ下手になっていたが。)


そう考えたらEGの敗北は準備段階、爆発的な成長を遂げる前の必要な経験なのかもしれない。

 


確実に強さに繋がるとは言えないが、「競争力」のEmpireが「闘争的要素」を発揮してG2を打ち倒したことを考えると、希望はあるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

【 Fnatic 】 「競争力」の弱体化、「競争」と「闘争」のバランスによる苦しみ?

 

戦術的な強み、「競争的要素」が弱体化してしまった印象を受けた。
強気な撃ち合い、力業にも寄ってしまっているイメージだ。

 

EG同様、Fnaticも「競争」と「闘争」のバランスに苦しんでいた可能性もある。
ポジション変更があったとの噂も聞いており、今は変革の前段階なのかもしれない。

 


私はS9 FinalでEmpireを苛つかせ、そのまま国境で撃破したことが忘れていない。


「競争」と「闘争」のバランスに優れており、チーム対策も堅実なFnatic. きっと頂点にも到達できるチームのはずだ。

 

現段階のオーストラリアの環境では練習環境が整っていないかもしれないが、今後の変化に注目していきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(その他小ネタ)

 

 

・BO5経験


G2はBO5経験が世界で最も豊富だ。

Empireは勝つことが出来たものの、BO5経験には圧倒的な差がある。

今後はEmpireが順調に“BO5経験”を伸ばしていくのかもしれないが、そういったBO5経験豊富なチームと相対するチャレンジャーは、経験不足を抱えながら挑まなくてはいけないだろう。

 

今回のMajor EU予選でもChaosがforZeに一度勝ったが、決勝で負けたことにより出場権を逃した。

勝者ブラケットで勝ち続けたチームが、一度勝利した相手に決勝のBO3で負けて敗退…ということになる。

 

それに対して批判も沸き上がっていた。

 


シージの競技シーンにはBO5が増えるべきなのかもしれない。

そう感じることもある。

 

Major大会の決勝くらいでしかBO5経験は積めないのだ。

それではBO5対策も予測もあったものではない。(まれに一部大会の決勝では行われているが。)

 

 

 

 

 

 

・攻撃側のスモークが激減している件

 

スモークが勝負タイミングの”お知らせ”になってしまうことが、最近のスモークの使われなさに繋がっているのかもしれない。

DZのFaZeに対する負け方(特に海岸線)などが、そのことを象徴している気がしている。

 

 

例えば、Secretはスモークをほんとに使わない。

一昔前はしっかりとスモークを使った戦術的な攻めなど見せていたが、最近はほんとに少ない。(もはや無い?)

 

 

”タイミング”という観点ではスモークを使う使わないに関わらず、Plant戦術よりも殲滅戦術の方が読まれにくいのだろう。

 

Plantではどうしても擬似的な人数差が発生するし、ロックなど含めて動きが止まりやすい。

タイミングを読まれた逆ラッシュを受けると、攻守の立場が逆転することもある。

 

 

防弾カメラ、イーヴィルアイ、ブラックアイ、妖怪、豊富なPlant阻害ガジェット(Plant阻害リテイクを補助できる要素でもある。)があることも影響があるだろうか。

また、罠オペレーターという”半情報系”なガジェットがあるが、現地内に入りきってしまえばまず存在しないだろう。

以前に本ブログで話題にしたインパクト餅つきという技術もある。

 

殲滅の方が、自分たちでタイミングをコントロールしやすい。相手の対応を許しにくい。

そういうことなのかもしれない。

それにはスモークは不要なのかもしれない。

 

 

単純に前線を引き上げて行われる戦いが増えて、スモーク持ちが落とされる可能性が増加したせいかもしれないが。

 

スモークは強力な分、それに頼った戦術になりやすい。

そして、いざスモーク要因が失われた時に応用を利かせにくいのだろう。

 

 

 

 

 

 

・最近の殲滅重視な環境。攻撃側に残された最強の武器は”武器”

 

攻撃側は物事を前に進めなくてはいけない側、故にキルに繋がる強力なガジェットと武器を持たされていた。

 

しかし、そのガジェットは強力過ぎた。よって次々とNerfを食らっていった。

ライオン、マーベリック、ノマド、ドッケビ、イン、グラズ、ゾフィア、ブリッツ、ジャッカル…多くのオペレーターを挙げられるだろう。

 

 

結果、何が残ったかというと…

武器だ。攻撃側の強力な武器だけが残った。

 

それを最大限に活かすにはどうすれば良いのか。

 

 

キルを取りに行けばいい。つまり殲滅だ。

それに呼応するように防衛も撃ち合う必要があり、そしてさらに殲滅セットプレイを行わせない為に防衛側は前めの勝負を仕掛け…

 

 

そういったループが昨今の”殲滅メタ”とでも言うべき環境を導いている気がしている。少し前は”ハードピークメタ”と言われていたが、今はそれだけでは勝てない時代になってきている気がする。

 

チームで”殲滅”を成立させられることが重要になってきているのかもしれない。(むろん、例外は居るが。forZeとかRask一人で壊滅させてるし…)

 

 

 

とはいえ、防衛武器の優位点「のぞき込みの早さ」があるにも関わらず(あるが故に?)、攻撃側が積極的に飛び出すようなシチュエーションが増えてきているのは不思議な感じもする。

武器が強力だからこそ、前めのアクションを成功させやすいことが影響しているのだろうか。

 

下手に生き残らせて「のぞき込みの早さ」を活かした逆ラッシュや飛び出し、リテイクをされるよりは効率的ということか?

 

 

 

 

 

 

FPS的なマップの攻め方がメタとして成立し始めている?

 

上記の話とも関わってくるというか、上記の話を総括するとそういった結論が出る気がしている。


最近はメタが発展してないとよく嘆かれているが、シージ的なメタの変更ではなく、FPS的なメタの発達が進行しているのかもしれない。

本大会を通して改めて感じたことの一つだ。

ここで言うFPSとは、シージ的な固有ガジェットやスモークを使った戦術的な攻めではなく、Coverや距離感、タイミングなどを重視したキルを取るような動き/殲滅するような動きのことである。

 

 

殲滅の優位性はこれまでの話で多少は説明できているだろうか。

 

殲滅優位な環境であるがゆえに、そして今まではそうでなかったがゆえに、FPS的な殲滅をうまくチームプレイとして成立できることが重要なのかもしれない。

そういったチームほど上位に来ているのかもしれない。(代表的なのはSecretやSSG、VGIAだろうか。G2やEmpireも部分的には含まれる?)

 

 

今はある程度”新しさ”や”慣れなさ”によって強さを発揮しているだけの可能性もある。

時代が進み”殲滅メタ”に多くのチームが慣れた時、どう環境は変化するのか。次はどこへ進むのか。這い上がるには何が求められるのか。

 

 

少なくともPlantが復権するには、防衛側のガジェット or 攻撃側の武器に包括的な調整が入らないと無理である気がしている。

新オペのアマルとゴーヨー?ゴヨ?も殲滅やPlant阻害のオペだと言って良いだろうし。

 

簡単に調整できるもの、すべきものでないのは確かだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわりに

 

今回はMajor期間中フルで休みだったので、リアルタイムで見つつ、思いついた感想などをノートに書いていた。

 

「どうせ書いたのだからもったいない」という感覚で記事を作り始めたら、とんでもない長さになった。(校正がすさまじく面倒だった。だいぶ雑になったと思う。)

 

ここまで到達できた方は一体何人いるのやら?
そもそもここまで読んでもらえるほどの面白さを提供できたのか?興味を引けたのか?
そんな疑問を抱きつつも後書きを書いている。

 

 

そういえば、今回の「競争/技術」「闘争/影響」の話がさらに気になった方は、私が書く際の元となった記事を読むと良いだろう。

 

サッカーの話ではあるが、日本人特有の問題や「競争型」競技と「闘争型」競技の練習方法の違いなどを述べている良い記事だ。

 

無料でけっこうな部分まで読めるので(というか私も無料部分しか読んでない。)、競技プレイヤーの方は特に参考になるだろう。

 

 

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「最近のシージはシージ的じゃない」との声も良く聞くが、個人的には上記したようなことを考えているのもあって案外楽しめている。

 

しかし、メタの停滞や変化の無さに対する苦肉の策、他のチームと差を付けることを考えて無理にひねり出した戦術、そういった見方もできるだろう。

 

個人的にはメタの停滞は、まだ良い方向に働いている。
しかし、今後は分からない。運営がどのような調整を行っていくのか注目だ。

 

 


そしてEmpire. 彼らを止めるチームは現れるのだろうか。
成長途中で頂点に立ってしまったチームに対して、今後の成長すら飛び越えて勝利できるチームは現れるのだろうか。

 

日本の競技シーンは進化していくだろうか。日本のチームは再び世界に対して勝っていけるようになるだろうか。

 


とりあえず言えることは、今後も私は興味深く見ていくだろうということだ。

 

それでは、また。

 

 

 

 

 

 

*1:ハードピークという単語に関しては色々と難しい部分があるのだが、VGIAがやっていたものは戦術的とは言えないレベルまでに至っていた印象もある。つまり、今回のハードピークが指すものは、いわゆる「ランクマプレイ」のようなPeekだ。

*2:Secret! Secret!

*3:自動昇格/降格が無くなったのは分かってるけど、Majorベスト4チームなんだからPL昇格させろ~~~(なお、数ヶ月後はどうなっているか分からない。)

*4:さらに過激な発言をすれば、チームのシージIQが下がってしまったのではないか、という印象も受けている。戦術面の向上と引き換えにするには惜しい気もする。